今回は、米国の高配当貴族に投資可能なETF「SDY」について解説します。
2022年は、グロース株からバリュー株に投資資金が移動すると予想されています。
そのため、配当金を連続増配するようなバリュー株を中心に投資する必要があります。
色々と調べたところ、米国の高配当貴族(連続増配20年以上)で構成されるETFがあったので紹介します。
ぜひ最後までお付き合いいただき、2022年の投資戦略の参考にしてください。
以前に解説した米国のバリュー株に分散投資できるETF「VTV」は、以下の記事で解説しているので参考にしてください。
SDYの基本情報
今回解説するのは、SDY(SPDR S&P 米国高配当株式 ETF)になります。
SDYが連動を目指すベンチマークは、「S&P高配当貴族指数」です。
名前からして配当金に焦点を当てたETFであることが読み取れます。
この指数は以下のような基準で決定しています。
- S&Pコンポジット1500の構成銘柄
- 過去20年以上連続増配の高配当利回り銘柄
- 構成銘柄の見直しは1年に1回(組入銘柄数114)
つまり、S&Pコンポジット1500の構成銘柄のうち、過去20年以上連続で配当金を増配した銘柄で構成されています。
ここで気になるのが、「S&Pコンポジット1500」です。
S&P500は聞いたことがあると思いますが、S&Pコンポジット1500は知らない人が多いのではないでしょうか。
S&Pコンポジット1500を調べてみたところ、以下のような意味であることが分かりました。
- S&P500(大型株)
- S&P MidCap 400(中型株)
- S&P SmallCap 600(小型株)
米国を代表する大型株から小型株で構成され、時価総額上位85%をカバーしている
ざっくりいうと、米国を代表する企業1500社(大型株・中型株・小型株)で構成される指数という理解でいいでしょう。
SDYの信託報酬は、0.35%と一般的な米国ETF(VOOやVTIなど)と比較してやや高くなっています。
特定の指数に連動する米国ETFの場合、信託報酬は0.2%以内であることが多いです。
ベンチマーク | S&P高配当貴族指数 |
信託報酬 | 0.35% |
設定日 | 2005年11月8日 |
分配金回数 | 4回/年 |
分配利回り | 2.64% |
SDYのセクター
SDYは20年以上連続増配がコンセプトのETFです。
そのため、今はやりのハイテク系のセクター(情報技術)の比率は非常に低くなっています。
その代わり、生活必需品や金融、資本財の構成比率が高いです。
20年以上連続増配というと、その間には経済危機が何度か訪れているため、長期に渡って安定して配当金を出し続ける企業で構成されているのでしょう。
SDYの組入銘柄
SDYの上位10銘柄は、「AT&T」「アッヴィ」「エクソンモービル」などいわゆる高配当銘柄が含まれています。
他には「コカ・コーラ」や「P&G」など日本でも有名な銘柄も入っています。このあたりは、連続増配銘柄として有名ですね。
連続増配銘柄を自分で1つ1つ探して投資するのは銘柄の売買や管理が大変なので、SDYを活用すればお手軽に投資できるのが大きなメリットです。
SDYの分配金
SDYは、年に4回分配金が支払いされます。
過去5年間の分配金は以下のとおりです。
年 | 分配金 |
2021年 | 3.39 |
2020年 | 3.02 |
2019年 | 2.64 |
2018年 | 2.44 |
2017年 | 2.10 |
毎年約0.3ドル増配していることが分かります。
さすがは20年以上連続増配している銘柄で構成されるETFです。配当の増配が確実に行われています。
なお、分配利回りは2.64%とそれほど高配当ではありません。
しかし、毎年のように分配金が増配していくので、10年後20年後には高配当化している可能性が極めて高いです。
そのため、すぐに分配金を欲しい人には向いていませんが、将来に多くの配当金をもらいたい人にはおすすめといえます。
SDYのリターン
設定来のリターン推移
設定来のリターンは、長期的には右肩上がりになっています。このあたりは、他の米国ETFと同じような傾向です。
そして2008年のリーマンショックと2020年のコロナショックでは大暴落を経験しています。
さすがに20年以上連続増配の銘柄で構成されていても、上記のような暴落を避けることはできません。
しかし、そこから必ず復活してきたのも事実です。暴落は絶好の買い場といえるのも頷けます。
直近5年のリターン推移
直近5年のリターンは、2020年のコロナショックで一時的にマイナスに転じています。
しかし、その後は徐々に回復していき、過去5年のリターンは75%程度です。
先ほども述べましたが、コロナショックが絶好の買い場であったことが分かります。
SDY(配当貴族) vs VYM(高配当)
SDYとVYMの比較をします。VYMは高配当ETFの王道として知られています。
このVYMと比較することで、SDYが優れたETFであるか判断することができるというわけです。
VYMについて詳しく知りたい場合には、以下の記事で解説しているので参考にしてください。
簡単に比較すると以下のようになります。
分配利回りは、ややVYMの方が高くなっていますがほぼ同じです。
ベンチマークと対象銘柄のコンセプトは、大きく異なります。
SDYは連続増配を主眼に置いている一方で、VYMは平均以上の配当に着目しています。
また、信託報酬は約0.3%も差があるのも大きな違いです。信託報酬はリターンに影響を及ぼすこともあるため、できる限り安いほうが望ましいといえます。
SDY | VYM | |
分配利回り | 2.64% | 2.77% |
ベンチマーク | S&P高配当貴族指数 | FTSEハイディビデンド・イールド指数 |
対象銘柄 | 20年以上連続増配の銘柄 | 平均以上の配当を出す米国大型株 |
信託報酬 | 0.35% | 0.06% |
直近5年のリターン比較 SDY vs VYM
直近5年の比較をします。結果は、SDYの僅差の勝利です。
コロナショック前の2019年からリターンに差が出始めていましたが、コロナショックで同程度まで下落しています。
その後、SDYの方が先に回復したのですが、ここ半年くらいでVYMに追いつかれました。
全体的な傾向としては、多くの場面でVYM以上のリターンを示していますが、ほぼ同じといっていいでしょう。
SDYの方が信託報酬が高いにも関わらず、VYMよりも高いリターンを叩き出すのは、高配当貴族というコンセプトのおかげでしょうか。
もし、信託報酬がVYMと同じ程度であれば、もう少しリターンに差が出たかもしれません。
直近1年のリターン比較 SDY vs VYM
次に、直近1年の比較をします。
先ほどの結果とは異なり、直近1年ではVYMの僅差の勝利です。
興味深いのは、2021年の上半期はSDYのリターンが上であったものの、下半期にはVYMに逆転されてしまいました。
2021年の全体的なトレンドとしては、上半期がバリュー株が強かった印象です。一方で、下半期はバリュー株の勢いがやや衰えました。
このことから、SDYの方がVYMよりもバリュー色がやや強いETFといえるのではないでしょうか。
SDYのコンセプト「20年以上連続増配」そのものが、バリュー株そのものといっても過言ではないので、当たり前の結果かもしれません。
直近5年と1年のリターンを比較した結論としては、「引き分け」といえます。
SDYとVYMではベンチマークが異なるものの、同程度のリターンを叩き出すことができます。
あとは、どちらのETFのコンセプトが好きかどうか好みの問題になりそうです。
SDY vs VYM vs HDV vs SPYD
そして最後に、SDYと米国高配当ETF(VYM・HDV・SPYD)の比較をします。
VYM・HDV・SPYDは、日本人の個人投資家に大人気の米国高配当ETFです。
先ほどはVYMと比較しましたが、今度は「SDY vs 米国高配当ETF(VYM・HDV・SPYD)」をすることで、どのETFがリターンが最も高いか検証します。
直近5年のリターン比較 SDY vs VYM vs HDV vs SPYD
直近5年の比較をしました。結果は、SDYとVYMの圧勝です。
2020年のコロナショック直前でHDVとSPYDに差をつけています。
そしてコロナショック後は更にリターンの差が大きくなりました。
HDVとSPYDは、SDYとVYMよりも分配利回りが高いのですが、結果的にはリターンが劣るという残念な結果になっています。
しかも、コロナショック後は両者の間でより大きなリターン差が生じました。
たしかに分配利回りが高いHDVとSPYDは魅力的ではありますが、リターンだけを考えるとSDYとVYMが優れたETFといえます。
まとめ
SDY(SPDR S&P 米国高配当株式 ETF)を解説しました。
SDYは、高配当貴族という20年以上連続増配銘柄を中心に構成されたETFです。
ETFのコンセプトとしては、非常に分かりやすいのが魅力的だと感じました。
リターンについては、おおよそVYMと同程度の結果が得られそうです。
一方で、HDVやSPYDのようにより高配当のETFと比較すると、SDYの方が良いリターンになります。
管理人的には、SDYのリターンがVYMとほぼ同じであったことからVYMで良いのではと思いました。
この理由としては、既にVYMを保有していることやVYMの方が信託報酬が安いといったことがあります。
VYMに投資していない場合には、SDYに投資するのも1つの考えかもしれません。