決算発表と同時に株主優待の改悪を発表
先日、吉野家ホールディングスの第二四半期決算が発表されました。
それと同時に、株主優待の改悪も発表しています。これによって大きな影響を受けるのは、100株しか保有しない優待目当ての個人投資家です。
通常は、株主優待の改悪があると株価が下落します。
なぜなら株主優待を目的に投資しているので投資の魅力が半減してしまい、多くの人が株を売却しようとするからです。
ところが、今回の吉野家ホールディングスの株主優待改悪の翌日は株価が上昇しました。下図を見てわかるように、10月13日に決算と株主優待の改悪が発表されたにもかかわらず、翌日は株価が急騰しています。
個人的には株価が下落するのだろうと予想していたのですが、全く逆の展開で驚きました。
そこで今回は、株主優待の改悪で株価上昇の謎に迫ります。
あくまでも管理人の個人的な仮説ですが、株主優待を改悪しながらも個人投資家に株を追加で投資させようとする巧妙な作戦が隠されているように思いました。
【株価上昇の理由】仮説①決算が良かった
まずは、単純に決算が良かったという仮説です。
前回の記事で解説したように、今回の決算では前年同期よりも利益が出ていることが発表されました。
そしてこれから業績が回復するのではという期待感があって株価が上昇したと考えることができます。
ただ、今回の決算で利益が出ていたのは徹底的なコストカットで利益を確保したという一面もありますが、新型コロナの協力金の影響も見逃せません。
詳細は以下の記事を読んでもらいたいのですが、①コストカット ②協力金の2つの要因で利益を確保していたのです。
そのため、利益は出ているものの企業の業績として大幅な改善が見られたかというと個人的には微妙な感じがします。
協力金は永久に続くわけではありませんし、協力金がなくなった後にコロナ前のように飲食店を利用する習慣が元通り復活するかは不透明ではないでしょうか。
そういったことを考えると、単純に決算が良かっただけで株価が上がったとするのは少し弱いと思います。
【株価上昇の理由】仮説②株主優待の改悪の内容が絶妙だった
次は、株主優待の改悪の内容が絶妙だったという仮説です。
では、さっそく株主優待の改悪について見ていきましょう。
今回の株主優待の改悪で影響を大きく受けるのは、100株しか保有していない個人投資家です。
下図を見てわかるように、100株保有の場合は年に2回3000円分のサービス券がもらえていましたが、年に2回2000円分のサービス券に変更になっています。
これだけでは改悪にしか見えないのですが、実は今回から200株~999株の区分が新設されました。
では200株保有の場合はどうなるかというと、年に2回5000円分のサービス券がもらえます。
そして管理人が予想するには、100株よりも200株のほうが株主優待の内容がお得なため、100株しか保有していない個人投資家が追加で100株投資したのではないかという仮説です。
そのため、株主優待改悪を発表した翌日に急激に需要が高まり、株価の高騰につながったのではないでしょうか。
株主優待の内容を細かく見ていくと、サービス券1枚の額が500円になったり、100株当たりでもらえるサービス券の額は変更前(現行)のほうがお得であるなど、確実に改悪と呼んでいい変更です。
管理人も同じ個人投資家なのでわかるのですが、株主優待が改悪もしくは廃止されるとその事実から目をそらしたくなります。
ところが今回の場合は100株追加投資することで、6000円分のサービス券が4000円分に減ってしまうところを5000円分(100株換算)に食い止めることができるのです。
上記のような心理が働いた結果、追加投資に踏み切った個人投資家が多く、株主優待の改悪の内容が絶妙だったという仮説を立てました。
まとめ
今回は、株主優待の改悪を発表しながらも株価が上昇した謎に迫りました。
株価上昇の仮説としては、①決算が良かった ②株主優待の改悪の内容が絶妙だったの2つを解説しています。
管理人の直感では②株主優待の改悪の内容が絶妙だったことが理由ではないかと思いますが、みなさんはどう感じますでしょうか。
もし仮に②が理由だったとしたら、吉野家ホールディングスの狙い通りでもあります。株主優待を改悪して株価を上げるという一見矛盾するようなことを、個人投資家の心理をうまく利用して成し遂げたと言えなくもないです。
真実はわかりませんが、とても興味深く勉強になる事例でした。
ただし、株主優待が廃止されると株価は暴落するのが通常です。廃止までいかなくとも、今回のような特殊な場合を除くと改悪でも株価は下落します。
管理人は、タカラレーベンで株主優待廃止による株価暴落を経験したことがあるので以下の記事も参考にしてください。