学習塾の銘柄は株主優待が充実かつ高配当ということで個人的にはおすすめしています。
実際に「早稲田アカデミー」「学究社」「東京個別指導学院」には投資していて、クオカードやカタログギフトなどの株主優待、配当金をありがたくいただいています。
しかし、上記三銘柄のうち、東京個別指導学院の株主優待廃止と減配がたて続けに発表されました。
そこで今回は、東京個別指導学院の株主優待廃止と減配、そして決算について解説します。
この記事を読むことで東京個別指導学院の銘柄について深く知ることができますので最後までお付き合いください。
東京個別指導学院とは?
事業内容
東京個別指導学院は、首都圏や関西を中心に個別指導型の学習塾を運営しています。
2007年からベネッセホールディングスと資本・業務提携をしており、現在では子会社になっています。
首都圏では「東京個別指導学院」、関西圏では「関西個別指導学院」という名称で展開しているのでご存じの人も多いのではないでしょうか。
個別指導塾の特徴としては、集団学習塾よりも1人1人に応じたカリキュラムを作成・指導できることにあります。
少子化はこれからもますます進展していくので、学習塾全体では大きな売上高の拡大は見込めないと思います。
しかし、学習塾に通わせる保護者や生徒の多様なニーズに応えやすい個別指導塾は、これからのトレンドになるのではと予想しています。
過去に銘柄解説をしていますので以下の記事を参考にしてください。
株価
まず株価の2年チャートを見ていきます。
現在の株価543円は、過去2年間では低水準の株価です。
2021年10-11月には株価が700円を超える場面もありましたが、そこから緩やかな下落トレンドが続いています。
株価だけに着目すると割安といえる水準です。しかし、株価が下落した理由がはっきりとしていることからそれを踏まえた上で投資判断すべきです。
それでは、もう少し細かく株価を確認していきます。
次に6か月チャートです。
過去6か月の株価推移は見事なボックス相場になっています。500円から545円の間でレンジを形成し、その中で動いています。
この期間に株価の暴落を2回経験しています。1回目が1月上旬、2回目が4月上旬です。
暴落した要因は何かというと、株主優待の廃止(1回目)と減配(2回目)になります。両方とも決算発表時に公表されました。
それを受けて株価は一時的に500円付近まで下げていますが、その後は回復するなど株価の下げ止まりは見られています。
東京個別指導学院の本決算(2023年2月期)
東京個別指導学院の本決算は2月です。今回は本決算(2023年2月期)を中心に解説します。
今回の決算のポイントは以下のとおりです。
●前年同期比で売上高が減少
●前年同期比で利益が減少
投資初心者にもわかりやすいように解説していきますので、ぜひ最後まで読んでください。
売上高:217億90百万円(前年同期比-3.1%)
売上高は、217億90百万円(前年同期比-3.1%)と減収になりました。
減収となった理由は、「高校生在籍数が減少した」ことです。
実際に決算説明資料で確認してみると、小学生と中学生がほぼ変化が無いにもかかわらず、高校生は約1000人も減少しています。
この減少幅は、2020年のコロナの影響があった年と同程度の減少になっています。2020年はコロナの影響という明確な要因があって全体の在籍数が減少しましたが、2022年は高校生のみ減少しているのが特徴です。
それではなぜ高校生在籍数のみ大きく減少したのでしょうか。
一般的に学習塾が生徒数を増やしたい場合には、合格実績が重要になります。当然ながら学習塾に通わせるのは志望校に合格させるためです。
そのため、高校生在籍数が減少した背景として「難関大学の合格実績がここ数年良くなかったのでは」という推測ができます。
ところが、実際に難関大学合格実績を見てみると、ここ数年はむしろ合格実績が大幅に伸びています。
つまり、高校生在籍数の減少は別の理由があることが分かります。それでは他にどんな理由があるのでしょうか。
決算短信に記載があった理由としては、「大学入試制度で総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜を利用する生徒数が増加した」ことが書かれていました。
要するに、いわゆる国語や数学などの筆記試験を必要とせずに、論文や面接などで入試を行って大学に入学する生徒が増えており、学習塾がターゲットとしている受験生が減っているということです。
そして高校生在籍数が減少したことで売上高が減少してしまったわけです。
売上高は、その企業が商品やサービスを販売してどれだけお金を稼いだかを表す指標です。
これが減るというのは、企業の稼ぐ力が弱くなったと言えます。
稼がないことには利益を生み出すことができないため、売上高が増えているかは重要なことです。
過去5年間の売上高と今期の予想は以下のとおりです。
2023年2月期の売上高は、前期比で減少しているとはいえ、過去5年間の中では比較的高い水準であることがわかります。
そして今期の予想は前期よりも増収することを見込んでいます。
営業利益:18億24百万円(前年同期比-23.9%)
営業利益は、18億24百万円(前年同期比-23.9%)と減益になりました。
その理由は、「売上高が減少したことやシステムの再構築による減価償却費・運営保守費用の増加」などです。
そもそも売上高が減少しているので営業利益が減少してしまいました。さらに学習塾を運営する様々な費用が嵩んでいるようです。
営業利益は、本業でどれくらい儲けているかを表す指標です。
これが黒字になっていれば本業で利益が出ている状態で、赤字だと本業で利益が出ていないことになります。
本業は、その企業の売上や利益の中心となる事業のことです。
ここで稼いだり利益が出ていなければ、長期的にはその企業の業績は悪化していきます。
過去5年間の営業利益と今期の予想は以下のとおりです。
2023年2月期の営業利益は、前期と比較すると減益になっていますが、コロナの影響が最も大きかった2021年よりは営業利益を確保できています。
そして2024年2月期の営業利益の予想は、2023年と比較して減益を見込んでいます。
2024年は売上高が増加する予想に対して営業利益が減少するのは物足りないところです。
「売上高は増えても利益につながらない」と読み取れます。
売上高が増加しても利益が必ずしも増加するわけではありません。その点に注意して決算を見ていきましょう。
経常利益:-18億34百万円(前年同期比-23.6%)
経常利益は、-18億34百万円(前年同期比-23.6%)と減益になりました。
その理由は、営業利益と同じで 「売上高が減少したことやシステムの再構築による減価償却費・保守費用の増加」などです。
本業の利益がそのまま経常利益にも反映されています。
経常利益とは、営業利益に営業外損益を反映させた利益のことです。
営業利益が本業でどれくらい利益を確保しているか表しているのに対して、経常利益は企業の通常の活動でどれくらいの利益を確保したか表す指標になります。
過去5年間の経常利益と今期の予想は以下のとおりです。
経常利益についても、営業利益と同様の傾向があります(営業利益を参照)。
当期純利益:12億49百万円(前年同期比-20.8%)
当期純利益は、12億49百万円(前年同期比-20.8%)と減益になりました。
当期純利益とは、法人税等の税金を支払った後の最終的な利益のことです。
この金額が成長しているかどうかが最も重要になってきます。
株主に支払われる配当金は、当期利益から捻出されるため、配当金が減配・増配されるかはこの数値を見ることである程度の予想は可能です。
※親会社(企業グループ全体)の当期純利益だけを再計算したのが、「親会社株主に帰属する純利益」になります。
過去5年間の当期純利益と今期の予想は以下のとおりです。
当期純利益についても、営業利益と同様の傾向があります(営業利益を参照)。
当期純利益は配当金の原資になるため、これが減ってしまうと配当金の減配や株主優待の改悪につながります。
当期純利益が現状の水準をキープできるか注意が必要です。
株主優待の廃止と減配
株主優待の廃止
東京個別指導学院は、株主優待として約1500円相当のカタログギフトがもらえることで有名でした。
自分自身も株主優待目当てで投資していたこともあり、今回の株主優待廃止はとてもショックな出来事でした。
そして株主優待廃止が発表されると、株価は急落してしまいました。その後は数日で元の株価水準まで戻ってきたものの、株主優待が無くなってしまったことから投資の魅力が大きく失われています。
減配
株主優待の廃止がありながら、配当金の減配も発表されています。
過去10年間の配当金推移を見ていきましょう。
2017年以降は増配こそストップしていましたが、減配せずに何とかこらえていました。ところが、2023年は減配がほぼ確定し、さらには2024年にはさらなる減配が待ち構えています。
この減配が嫌気されて株価は一時的に下落しました。株主優待が無くなっても高配当銘柄だから…という理由で持ち続けていましたが、保有する意義が見いだせ無くなってしましました。
現在含み損を抱えています。意外にも株価は減配直後からすぐに回復しているので、もう少し様子を見てから売却しようと考えています。
まとめ
東京個別指導学院の決算や株主優待廃止、減配について解説してきました。
前年同期と比較して売上高はやや増収だったものの、利益が減少して悪い決算でした。
さらには株主優待廃止と配当金の減配が発表され、東京個別指導学院に投資する意味を見失っています。
今のところ株価は下げ止まっているのでどこかのタイミングで売却しようと考えています。
個別株は決算分析が必須になります。また、減配や株主優待廃止など決算以外の部分でも株価が大きく変動する可能性が高いです。
今回の記事が皆さんの投資の役に立てれば幸いです。