投資

【不況に強い】XLV(ヘルスケア・セレクト・セクター SPDR ファンド)を解説

今回は、米国のヘルスケアセクターに投資可能なETF「XLV」について解説します。

2022年はウクライナ情勢や原油価格の高騰などを起因としたインフレが進行しています。米国では約40年ぶりのインフレ率を記録し、FRBによる利上げが急ピッチで進んでいるところです。

そして利上げ(金利の上昇)と株式には逆相関の関係にあり、金利が上昇すると株価は下がることが多いことで知られています。

また、金利の上昇は過熱した経済を冷やす効果があることから、米国経済は近いうちに不景気に陥る可能性が高いです。

今後は金利の上昇と不景気を同時に迎える可能性が高く、コロナショック後にブームになったハイテク株や現在最も注目されている石油株の流れは完全に終わると考えられます。

そこで不景気でも投資妙味のあるセクターETFについて紹介したいと思います。今のうちから不況に強いセクターに投資しておくことで、市場平均以上のリターンを確保できる可能性がありますので参考にしてください。

以前に米国のエネルギーセクターETF「XLE」と金融セクターETF「XLF」を解説しています。こちらも参考にしてください。

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XLVの基本情報

今回解説するのは、XLV(ヘルスケア・セレクト・セクター SPDR ファンド)です。

米国のヘルスケアセクターが投資対象になります。医薬品やバイオテクノロジー、ヘルスケア用品を中心とした企業で構成されています。

連動を目指すベンチマークは、「ヘルスケア・セレクト・セクター指数」です。

この指数は以下のような基準で算定されます。

XLVの信託報酬は、0.11%と格安ではありませんが許容範囲内でしょう。

特定の指数に連動する米国ETFの場合、信託報酬は0.2%以内であることが多いです。同じ指数であれば信託報酬の安いETFを選びましょう。

ベンチマークヘルスケア・セレクト・セクター指数
信託報酬0.11%
設定日1998年12月16日
分配金回数4回/年
分配利回り1.45%

XLVの組入銘柄

XLVの上位10銘柄は、「ユナイテッド・ヘルスグループ 」「ジョンソン&ジョンソン」「ファイザー」「アッヴィ」など保険やヘルスケア関連の大企業が含まれています。

そしてこれらの企業が提供する製品やサービスは、不景気に陥ったとしても需要が減りにくいという特徴があります。

例えば、不景気になったからといって医薬品の販売数量が極端に減少することは考えにくいのです。

出典:ETF.com(https://www.etf.com/

それではXLVの構成割合を見ていきましょう。

ユナイテッド・ヘルスグループ 」「ジョンソン&ジョンソン」「ファイザー」の 上位3社だけで約25%です。

一般的にETFは分散投資が可能でありますが、今回のようなセクターETFでは対象となる企業が少ないこともあり、特定の企業の割合が高くなります。

他のETFに比べて分散性が劣ることは知っておきましょう(そもそも特定のセクターに集中して投資するのがセクターETFのコンセプトなので当たり前の事実ではあります)。

上位3社の特徴を簡単にまとめてみました。

社名特徴
ユナイテッド・ヘルスグループ医療保険サービスとヘルスケア事業を展開する世界最大のヘルスケア企業の1つ。
ジョンソン&ジョンソンヘルスケアに特化した幅広いビジネスを展開している。新型コロナウイルスのワクチンを開発した企業の1つ。
ファイザー世界最大の製薬会社の1つ。日本でも用いられている新型コロナウイルスのワクチンを開発した企業。

XLVの分配金

XLVは年に4回分配金が支払いされます。過去3年間の分配金実績を見ると、年間で1.7~2.2ドルの分配金です。

出典:楽天証券(https://www.rakuten-sec.co.jp/

分配利回りは1.45%と高配当ではありません。アッヴィやファイザーなど高配当株として知られている銘柄が上位を占めていた割には今一つでした。

分配金が少ない代わりにETFの株価(基準価額)の上昇を期待することはできます。このことは次に解説するリターンの推移で確認していきます。

XLVのリターン

設定来のリターン推移

設定来のリターンは、暴落を経験しつつ長期的には右肩上がりのチャートです。

2008年のリーマンショック2020年のコロナショックでは暴落を経験しています。不景気に強い特徴があるものの、暴落を回避することはできません。

出典:ETF.com(https://www.etf.com/

直近5年のリターン推移

直近5年のリターンを詳しく見ていきましょう。2020年のコロナショックで一時的にリターンがゼロまで下落しましたが、その後は急激に回復しています。

しかし、2021年以降はボックス相場のようにある一定のレンジで上下に推移しているのが特徴的です。

出典:ETF.com(https://www.etf.com/

2021年はハイテク株から石油株に主役が交代した年でもあり、ヘルスケアセクターには投資家の資金がそれほど振り向けられなかったといえます。

XLV(ヘルスケア) vs VOO(S&P500)

XLVとVOOの比較をします。VOOはS&P500に連動するETFです。

つまり、XLVとVOOを比較することでヘルスケアセクターと市場平均(S&P500は全業種含まれている)のどちらがパフォーマンスが良かったか分かります。

直近5年のリターン比較 XLV vs VOO

直近5年の比較をしてみました。結果は「引き分け」です。

コロナショックの前ではほぼ同じようなリターンを示していましたが、コロナショック後の回復局面ではVOOの圧勝でした。

これはVOOにはハイテク株が含まれており、ハイテク株が市場をけん引していたことを示しています。

つまり、コロナショック後の回復局面ではXLVのリターンは市場平均を下回っていたわけです。

出典:ETF.com(https://www.etf.com/

しかし、2021年以降は徐々にリターンの差が縮まってきました。ハイテク株の下落によりVOOのリターンが低迷したことが原因です。

このようにセクターETFの場合は、時期によって市場平均を上回る(下回る)可能性があります。

特定のセクターに資金が流入し続けることは無いため、これから上昇しそうなセクターを先読みして投資できれば高いリターンが得られるはずです。

逆に資金流出しそうなセクターに投資続けてしまうと市場平均を下回るパフォーマンスになるため、これから上昇しそうなセクターを見抜いて投資できるかがカギにになります。

2022年のリターン比較 XLV vs VOO

次に、2022年から現在までのリターンを比較します。この期間ではXLVの「勝利」です。

つまり、今年のXLVのリターンは市場平均を上回っていることを示しています。2022年は株式市場が低迷している中、市場平均よりも下落幅を小さくして何とか持ちこたえている様子が見て取れます。

出典:ETF.com(https://www.etf.com/

そして米国経済が不景気に陥るのはこれから先のことです。おそらく市場平均以上のリターンをXLVは約束してくれると思います。

XLVが真価を発揮するのはもう少し先のことです。それを先回りして今から投資しておけば市場平均以上のリターンを確保できるかもしれません。

まとめ

XLV(ヘルスケア・セレクト・セクター SPDR ファンド)を解説しました。

ヘルスケアセクターは不景気に強いという特徴があります。今後数年以内に米国経済は不景気に陥ると予想されており、ヘルスケアセクターは市場平均以上のリターンを確保できる可能性があります。

今から先回りしてXLVに投資するのはいかがでしょうか。投資資金の一部をその時に旬のセクターETFに投資する戦略も頭の片隅には入れておきたいものです。