配当利回りとは
配当利回りとは、株価に対して年間の配当金がどの程度の割合かを表す指標です。
計算式で表すと以下のようになります。
例えば、配当金が100円で株価が2000円の場合では、配当利回りは5%です。
仮に5%の配当金を20年間もらい続けたとしたら、累計の配当金は投資した金額(株価)と一致します。つまり、配当利回りというのは、投資した金額を何年間で回収できるのかという意味もあります。
配当利回りが1%であれば100年、10%であれば10年が投資した金額を回収できる年数です。
また配当利回りは前回解説した配当性向と同様に、高配当株投資をする際に特に重要な指標になります。
配当性向と深い関係があるので、配当性向の記事も参考にしてください。
配当利回りが高いことの意味
では、配当利回りが高いことの意味について見ていきましょう。
配当利回りが高いことの良い点は、①配当金が多い ②株主還元の意識が高いの2点です。
これは前回解説した配当性向と同じで、配当利回りが高いというのは、企業が稼いだ利益のうち多くの割合を配当金という形で株主に支払っていることを意味します。
そして、配当利回りが高いほど企業が配当金で株主に利益を還元しようとする意識が高いのです。
一方で悪い点としては、 ①株価が下がった ②減配のリスクが高いの2点になります。
配当利回りが高くなるのは、株価が下落したことが原因のこともあるのです。
株価が下がるときは、企業の業績が悪化していることが多いため、「業績悪化→株価下落→配当利回りが高い」という負のサイクルになっているか注意が必要です。
そうなると、株価が下落したことによって含み損を抱えたり、業績悪化による減配の可能性もあります。
なぜ配当利回りが高いのか、これをしっかりと見極めておかないと投資が失敗する可能性が高くなるでしょう。
配当利回りが低いことの意味
次に、配当利回りが低いことの意味について見ていきましょう。基本的には、配当利回りが低い場合の逆になります。
配当利回りが低いことの良い点は、①株価が上がった ②減配のリスクが低いの2点です。
配当金は変化しなくとも、株価が上昇したことによって配当利回りが低下することがあります。また、配当利回りが低いということは企業が無理して配当金を出していないことが多く、減配のリスクが低いとみなせます。
ただ、実際には配当利回りだけではなく配当性向も確認して、利益の範囲内で配当金を出せているかをチェックするようにしましょう。
一方で悪い点としては、 ①配当金が少ない ②株主還元の意識が低いの2点になります。
配当利回りが低くなるのは、株価に対して配当金が少ないからです。また、企業の株主還元意識が低いことも考えられます。
もちろん、企業の業種や成長段階によって配当金をどの程度還元できるかは変わってきますので、配当性向などほかの指標と複合的に分析すると良いでしょう。
ただ確実に言えるのは、こういった企業への投資は配当金目当ての高配当株投資では絶対に避けたほうが良いです。
配当金目当てで投資しているのに配当利回りが低い企業に投資するのは、目的と手段が一致しません。
配当利回りの目安
東証1部上場企業の配当利回りの平均値は、約2%と言われています。
一般的には、配当利回りが3%(もしくは4%)以上で高配当と呼ばれることが多いです。
そのため、8%とか10%を超えるような配当利回りになっている場合には、何かの原因で高配当になっていると予想するとよいでしょう。
※配当利回りの計算式に用いている配当金は、会社予想の場合もありますし過去の実績を用いている場合があります。一時的に高配当になっているかどうかを見極める際には、この点にも注意が必要です。
また、配当性向と同様の考え方ですが、企業の成長段階によっても配当利回りが異なります。
企業の利益を配当金として株主に還元するか、新規事業の拡大や設備投資をするかは企業が成長途中なのかどうかで決まるのです。
一般的には、創業して間もない急成長中の企業は配当利回りが低く抑えられ、その代わり利益を新規事業の拡大や設備投資に回します。
一方で、成長が見込めない企業(成熟した企業)は配当利回りが高い傾向にあります。すでに事業の成長が鈍化し、利益を新規事業の拡大や設備投資に回す必要がないので、配当金として株主に還元します。
企業の成長段階(成長中or成熟)によっても配当利回りの傾向が変わります。
配当利回りは高いほど良い?
それでは配当利回りが高いほど良いかというと、そういうわけではありません。
配当性向と同じように、極端に高い数値を示しているときは何かしらの理由があって高配当化しているのです。
高配当化の原因は、業績悪化による株価の下落が潜んでいる可能性があります。
そのため、高配当という理由だけで投資してしまうと半年先・数年先に痛い目を見る可能性が高いです。
次のように、通常時は株価も配当金も安定しているが、何らかの原因で一時的に株価が急落した場合を考えてみましょう。
通常時は、株価2000円、年間の配当金100円、配当利回り5%で推移する株があります。
そして2021年に株価が半分まで低下してしまい、配当利回りは10%まで上昇しました。
もし仮に、企業の業績が良いにもかかわらず株価が急落していたとしたら、配当利回り10%であっても投資すべき銘柄である可能性が高いです。
コロナショックのように株式市場全体が混乱しているときには、企業の業績とは無関係であっても株価が暴落することがあります。
そういった場合にはすぐに株価が回復することが多いため、配当利回りが10%と高い状態で投資できたことになります。さらに、株価の上昇による含み益も得られます。
このように、配当利回りは株価の変動による影響を大きく受けるため、単純に高配当というだけで飛びついてしまうと株価がじりじりと低迷しているような銘柄にも投資してしまう可能性もあるのです。
なぜ配当利回りが高いのか、その理由についてしっかりと考える必要があります。くれぐれも、「業績悪化→株価下落→配当利回りが高い」という負のサイクルに陥らないようにしましょう。
まとめ
配当利回りについて解説しました。
配当利回りとは、株価に対して年間の配当金がどの程度の割合かを表す指標です。
配当性向と同様に、配当利回りが高ければ高いほど良いわけではありません。配当利回りが高いのは、株価が低迷しているなどの理由が隠されている場合もあります。
また企業の成長段階に着目すると、成長中の企業は配当利回りが低く抑えられ、成熟した企業は配当利回りが高い傾向があります。
配当利回りだけを見るのではなく、配当性向とセットで分析する、なぜ配当利回りが高いのか(低いのか)まで考えることが重要です。