決算:武田薬品工業(4502)
武田薬品工業の第二四半期の決算が発表されました。
先日、開発中の薬の治験を中断することを発表し、株価が急落したのは記憶に新しいです。
そういった背景もあり、今回の決算発表でどのような内容が報告されたのか、株価に対してどのような反応があるかについて解説していきます。
決算の見どころ
今回の決算の見どころは以下のとおりです。
○今期第二四半期累計の最終利益は前年同期比で2.1倍に改善
×今期の最終利益予想を26.3%下方修正
○自社株買い(3500万株・上限1000億円)の発表
第二四半期累計の最終利益は大幅に改善されましたが、今期の最終利益予想は下方修正が発表されています。
ここまで順調に進捗しているにも関わらず最終的には業績の下方修正になったことから、株価に影響を与えそうです。
しかし、それと合わせて自社株買いも発表しています。自社株買いは市場に出回る株式の数が減少することから、1株あたりの利益が増加します。
その結果、通常であれば株価が上昇することが多いです。
果たして、下方修正と自社株買いの影響はどちらが影響を大きく及ぼすのでしょうか。決算の内容を解説していきます。
売上収益(売上高):1兆7944億23百万円(前年同期比12.8%増)
売上収益(売上高)は、1兆7944億23百万円(前年同期比12.8%増)と増収になりました。
医薬品の販売が好調なのかと予想したのですが、どうも違うようです。
増収となった主な理由は次の2点になります。
- 為替レートの影響
- 糖尿病治療剤ポートフォリオの売却
まず、為替レートがプラスの影響を与えたことにより、前年同期と比べて売上収益が増加しました。
また、糖尿病治療剤ポートフォリオを帝人ファーマに1330億円で売却しており、臨時的な売上収益があったようです。
つまり、武田薬品が販売している医薬品の売上が急増したというわけではなく、①為替レート ②事業の売却によって売上収益が増えました。
どうやら一時的な要因で増収になっているようです。
営業利益:3459億79百万円(前年同期比60.5%増)
営業利益は、3459億79百万円(前年同期比60.5%増)と増益になりました。
ではなぜ営業利益が増加したかというと、売上収益が約2000億円増加したからです。
売上収益の増加により、営業利益が約1300億円増加しています。
税引前利益:2844億25百万円(前年同期比126.5%増)
税引前利益は、2844億25百万円(前年同期比126.5%増)と増益になりました。
その理由としては、①売上収益の増加 ②金融損失の減少(利息費用の減少など)の2点です。
特に金融損失は前年同期から約200億円減少しており、税引前利益を押し上げる要因となっています。
業績予想(2022年3月期)
第2四半期決算では、前年同期と比べて売上収益および利益が大幅に改善されたことがわかりました。
それでは、今期の業績予想はどのように変化したのでしょうか。第2四半期の決算では好調な結果であったため、上方修正の発表はあったのでしょうか。
まさかの下方修正
2022年3月期の連結業績予想を見ていましょう。
結果は、まさかの下方修正でした。
売上収益(売上高)、営業利益などはそのままで変化はありませんが、最終利益が26.3%減で着地する予想です。
その理由は、以下のように決算短信で述べています。
2014年にShire社がAbbVie社からの買収申し出の取下げに関連して受領した違約金に対するアイルランドでの課税を巡る税務評価から生じた税務費用を反映したものです。
武田薬品工業 2022年3月期第2四半期決算短信
為替レートの追い風や糖尿病治療剤ポートフォリオの売却により、売上収益を大幅に増加させたにもかかわらず、上記の税務費用を反映させたことで最終利益が下方修正されたようです。
こうなると株価への影響が気になるところですが、武田薬品工業は手を打ってきました。
自社株買いを発表とその狙い
決算と同時に、自社株買い(3500万株・上限1000億円)を発表しています。 発行済み株式数の約2%に相当するようです。
通常、自社株買いを発表すると株価が上昇します。なぜなら、市場に流通している株式数が減少するため、1株あたりの利益が増加するからです。
こうなると、下方修正による株価下落と自社株買いによる株価上昇のどちらに市場が反応するのでしょうか。
決算&自社株買いを発表した翌日の株価チャートを確認しました。
結果としては、株価は前日比1.2%高と自社株買いの影響がやや大きく出ていると推測できます。
業績予想を下方修正しながらも自社株買いを発表した背景としては、これ以上株価を下落させることはできないということがあると思います。
10月上旬に将来有望な新薬候補の治験中断を発表し、株価が3600円から3200円まで約10%も暴落しました。
そして今回の下方修正が重なってしまうと、更なる株価の下落を招きかねません。
そこで、下方修正と同時に自社株買いを発表することで今の株価水準を何とか死守したいのではないか、そういった狙いを感じます。
実際に株式市場は、下方修正よりも自社株買いを好感し、翌日の株価はやや上昇しました。この効果がいつまで続くか分かりませんが、決算発表と同時に株価急落を防ぐことは何とかできたのではないでしょうか。
まとめ
武田薬品工業の決算が発表されました。
前年同期と比較して売上収益や利益が大幅に改善しましたが、今期の業績予想を下方修正しています。
それと同時に自社株買いも発表し、なんとか株価の下落を食い止めている状況です。
10月初旬には、新薬候補の治験中断のニュースもあり株価が急落する場面もありました。
100株ホルダーの管理人としては、今後も目を離せない状況が続きそうです。
武田薬品工業については、新薬候補の治験中断による株価暴落やボックストレードについて記事を書いています。
以下の記事も参考にしてください。