今回は、米国のエネルギーセクターに投資可能なETF「XLE」について解説します。
前回も紹介したように、2022年はエネルギー関連企業を含むバリュー株投資に妙味があります。
日本ではあまり実感しませんが、世界では長期インフレの懸念が高まっています。
特に米国では、消費者物価指数が歴史的な高まりを示しているところです。
これらの原因としては、原油高があります。
過去の歴史を振り返ってみると、原油価格とインフレには高い相関関係があります。
この原油高を追い風にして利益を上げることができるのが、エネルギー関連企業です。
基本情報
今回解説するのは、XLE(エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド)です。
米国のエネルギー関連企業を投資対象としています。石油や天然ガスなどの生産・精製等に携わっている企業をイメージしてください。
連動を目指すベンチマークは、「エネルギー・セレクト・セクター指数」です。
この指数は以下のような基準で決定しています。
- S&P500の構成銘柄
- エネルギーセクターに分類(世界産業分類基準)
信託報酬は、0.12%と合格点といえます。
特定の指数に連動する米国ETFの場合、信託報酬は0.2%以内であることが多いです。
ベンチマーク | エネルギー・セレクト・セクター指数 |
信託報酬 | 0.12% |
設定日 | 1998年12月16日 |
分配金回数 | 4回/年 |
分配利回り | 4.26% |
セクター
XLEはエネルギーセクターに特化したETFであるため、石油や天然ガスに関連するもので占められています。
組入銘柄
XLEの上位10銘柄を見ていくと、「エクソンモービル」「シェブロン」などが世界的大企業が含まれています。
特に、エクソンモービルとシェブロンの2社で半分近く占められているのが大きな特徴です。
ETF=分散投資をイメージする人が多いでしょう。
しかし、XLEは①セクターETFであること ②エネルギー関連企業は参入障壁が高いといった理由から、少数の大企業で構成されています。
良くも悪くも、エクソンモービルとシェブロンの業績に大きく左右されるというわけです。
分配金
XLEは、年に4回分配金が支払いされます。
2019年だけ例外的に分配金が高かったですが、基本的には年間で約2~2.3ドルの分配金が得られます。
分配利回りは4.26%と高配当といえる水準です。
分配利回りが高い理由は、エネルギーセクター自体が成熟した企業が多く、利益を株主に還元するためです。
エクソンモービルやシェブロンは高配当株としても知られており、これらの銘柄を含むXLEの分配金も自然と多くなります。
一方で、GAFAMのような成長中の企業は、利益を株主に還元するよりも事業の拡大に利益を使います。
つまり、分配利回りが高いというのは安定した利益を株主に還元してくれる一方で、将来の成長性が無いことを意味するのです。
XLEに投資する際には、その事実を頭の中に入れたうえで投資を検討しましょう。
なお、エクソンモービルとシェブロンを両方を含む高配当ETFに、HDVとSPYDがあります。
XLEよりも広く分散投資できるので以下の記事も参考にしてください。
リターン
設定来のリターン推移
設定来のリターンは、2000年代後半からボックスで推移しています。
最高で400%越えのリターンを記録した一方で、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックでは暴落しています。
先ほど解説したように、セクターそのものが成熟した企業で構成されていることもあり、今後も大きな成長を見込むことはできません。
むしろ、脱炭素・脱資源の動きがこれから加速することもあり、10年20年という長期でみると緩やかな下落トレンド入りする可能性もあります。
直近5年のリターン推移
直近5年のリターンは、現時点ではマイナスになっています。
2020年3月のコロナショックでは、一時原油価格がマイナスに転じる(需要が急速にしぼみ在庫を捌く必要があった)など、苦しい場面に遭遇しました。
その後、2021年に入ってから急速に回復しています。
経済の再開とともに原油価格が高水準で推移してエクソンモービルやシェブロンの業績も徐々に戻りつつあります。
XLE(エネルギー) vs VOO(S&P500)
XLEとVOOの比較をします。VOOは、S&P500のETFです。
つまり、XLEとVOOを比較することでエネルギーセクターと市場平均(S&P500は全業種含まれている)のどちらがパフォーマンスが良かったか分かります。
直近5年のリターン比較
直近5年の比較をします。
結果は一目瞭然でVOOの圧勝です。
VOOはコロナショックからの回復も早く、現在もリターンが上昇し続けています。
このように、セクターETFは選び方を間違えてしまうと市場平均のリターンから大きく劣ります。
また、XLEのリターンの変動はVOOよりも大きい傾向があります。
XLEはセクターの偏り(エネルギーセクターのみ)があり、エクソンモービルとシェブロンで半分近く占めているので2社のパフォーマンスに大きく影響を受けるためです。
直近1年のリターン比較
次に、直近1年の比較をします。
先ほどの結果とは大きく異なり、ここ1年間ではXLEの圧勝です。
1年間のリターンが一時60%を超えるなど、凄まじいリターンを叩き出しました。
VOOの約30%のリターンも相当すごいのですが、それが霞んでしまうほどです。
セクターETFは、これから好調になるであろうセクターに投資することができれば、市場平均を大きく上回るパフォーマンスを発揮します。
そしてリターンの変動が激しいです。
そのため、投資のコアにはVOOのように市場平均に投資できるETF、サテライトとしてXLEのようなセクターETFに短期で投資というのがよさそうです。
まとめ
XLE(エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド)を解説しました。
2022年は、長期金利の上昇によりグロース株からバリュー株投資に妙味がありそうです。
その中でも、エネルギーセクターはインフレの影響や原油価格の高騰で最も恩恵を受けそうなセクターです。
すでに2021年はVOO(市場平均)を大きく上回るリターンを叩き出していますが、果たして2022年も同じ結果となるか。
今から目が離せません。