米国の高配当ETFって何?
ETFとは?
ETFとはExchange Traded Funds(上場投資信託)と呼ばれるものです。
投資信託は、投資家からお金を集めて投資のプロ(ファンドマネージャー)が運用する金融商品で、株式や債券などが投資対象になっています。
上の図のように投資のプロに投資資金を預けて、プロが選定した株式や債券に投資するというのがETFの基本的な仕組みです。
そしてプロがどのように運用(銘柄の選定や投資比率)するかはETFによって異なるため、ETFに投資する際には運用方針をしっかりと理解してから投資する必要があります。
米国の高配当ETFとは?
高配当ETFとは、配当利回りの高い株式(高配当株)で構成されるETFのことです。
その中でも特に人気があるのが、米国の高配当株で構成される「VYM」「HDV」「SPYD」の3つになります。
そして米国の高配当株ではなく高配当ETFに投資すべき理由は、米国の個別株投資だと以下の問題に直面するからです。
- 投資に関する情報が入手しにくい
- 決算分析が難しい
- 英語で書かれている
しかし、ETFではどのように運用(銘柄の選定や投資比率)するかはプロが決めてくれるため、ETFの選び方さえ間違えなければ決算分析などの面倒なことをしないで済みます。
VYM・HDV・SPYDを徹底比較
VYM・HDV・SPYDの基本データ
それでは、米国高配当ETFの「VYM」「HDV」「SPYD」の基本データを比較していきましょう。
設定日はVYMの2006年11月が最も古く、次にHDVの2011年3月、SPYDの2015年10月が最も新しいです。
信託報酬はそれぞれ0.06%~0.08%と格安でほとんど差がありません。
例えば、VYMを100万円運用した際の信託報酬はたったの600円です。
これだけの費用で銘柄の選定や入替などをプロのファンドマネージャーに任せられるのが、ETFの最大の強みです。
個別株であれば年4回の決算や業績の確認をしなければならないところ、そこに労力をかけなくて済みます。
VYM・HDV・SPYDの運用方針
米国高配当ETFの「VYM」「HDV」「SPYD」の運用方針を比較していきましょう。
上記のいずれのETFも、米国株のうち配当利回りの高い株式を選定してETF化していることには変わりありません。
ただ、ETFによって運用方針が微妙に異なるためその部分を細かく見ていきたいと思います。
下図に示したのがそれぞれの運用方針になります。
いずれのETFでも共通しているのは、配当利回りの高い米国株で構成されているという点です。
VYMは、①米国の大型株 ②平均以上の配当の株式を選定しています。
配当利回りはHDVやSPYDよりも高くないものの、安定性に強みがあるETFです。
HDVは、①配当水準が比較的高い ②配当持続性がある ③財務健全性がある ④ビジネスに競争優位性がある株式で構成されています。
財務健全性が高く、ビジネスに競争優位性があるというのが最大の特徴です。
SPYDは、①米国の大型株S&P500 ②配当利回り上位80銘柄で構成されています。
S&P500という米国を代表する500銘柄のうち配当利回りの高い株式を選ぶだけの単純で分かりやすい運用方針です。
このように配当利回りの高いという運用方針のETFではありますが、それぞれのETFで運用方針が微妙に異なるのが面白い部分です。
VYM・HDV・SPYDの上位10銘柄
運用方針を確認したところで、それぞれのETFを構成する上位10銘柄をみていきましょう。
以下に示した表がVYM・HDV・SPYDの上位10銘柄です。
配当金の連続増配企業として有名な「ジョンソン・エンド・ジョンソン」「P&G」、高配当銘柄として知られている「エクソンモービル」「アッヴィ」「ベライゾン」などが上位銘柄として名を連ねています。
ただし、高配当の銘柄で構成されるETFであるため、選定された銘柄も重複している点に注意が必要です。
例えば、製薬会社の「アッヴィ」はVYM・HDV・SPYDのすべてのETFに含まれていることが分かります。
それ以外にもP&GやJPモルガンなどはVYMとHDVの両方に含まれています。
そのため、VYM・HDV・SPYDにそれぞれ投資したとしても銘柄を細かく見ていくと重複している銘柄がいくつかあることは覚えておきましょう。
ETFを複数投資したとしても、思ったほど分散投資できていなかったということもあります。
VYM・HDV・SPYDのリターン
それでは、VYM・HDV・SPYDの基準価額(株価)のリターンをみていきましょう。
まずは直近1年間のリターンになります。
最もリターンが高いのはSPYD(約18%)、次にHDV(約17%)、最後がVYM(約13%)です。
この1年間はグロース株からバリュー株に投資資金が流入しており、バリュー株の割合が高いSPYDやHDVのリターンが高くなっています。
次に直近5年間のリターンになります。
最もリターンが高いのはVYM(約70%)、次にSPYD(約60%)、最後がHDV(約55%)です。
2017年から2020年のコロナショック前まではリターンにそれほど差はありませんでしたが、2020年4月以降はリターンに大きな差があります。
特にコロナショック後はエネルギー株が一時的に低迷しており、その割合が比較的低いVYMのリターンがHDV・SPYDを上回っています。
また、SPYDはコロナショック時に直近の高値から50%暴落しており、そこからの回復も一番遅かったことが分かります。
このことからSPYDはVYMとHDVと比較して暴落耐性が無く、○○ショック時に大きく資産が目減りする可能性が最も高いことは知っておきましょう。
しかし、先ほど解説したように直近1年間のリターンでは最も高いリターンになっていることから、コロナショックの暴落時に投資していれば大きなリターンを得ることができます。
投資初心者におすすめ「VYM」
VYMの特徴まとめ
VYMの特徴をまとめてみました。
- 設定日:2006年11月
- 運用会社:バンガード
- 信託報酬:0.06%
- 分配利回り:2.8%
- 銘柄数:約400銘柄
- リターン(1年):+13%
- リターン(5年):+70%
- 銘柄選定:米国の大型株&平均以上の配当
- 暴落耐性:○
VYMの詳しい解説は以下の記事を参考にしてください。
VYMがおすすめの投資家は?
VYMがおすすめの投資家は、投資歴の浅い投資初心者です。
高配当ETFの中でも分配利回り(配当利回り)のやや低いVYMは、配当金目当ての投資家にはやや物足りない面があるかもしれません。
一方で、基準価額のリターンが最も高く暴落耐性があることから、配当金とリターンを狙いつつ安定して投資を継続することが可能で投資初心者向きといえます。
配当金目当て&暴落耐性が欲しい投資家におすすめ「HDV」
HDVの特徴まとめ
HDVの特徴をまとめてみました。
- 設定日:2011年3月
- 運用会社:ブラックロック
- 信託報酬:0.08%
- 分配利回り:3.2%
- 銘柄数:約75銘柄
- リターン(1年):+17%
- リターン(5年):+55%
- 銘柄選定:配当が高い&配当持続性&財務健全性&競争優位性
- 暴落耐性:○
HDVの詳しい解説は以下の記事を参考にしてください。
HDVがおすすめの投資家は?
HDVがおすすめの投資家は、配当金目当て&暴落耐性がある方が良い人です。
高配当ETFの中では分配利回り(配当利回り)は平均的で、VYMとSPYDの中間的な位置づけになります。
HDVの銘柄選定は配当持続性&財務健全性に重きを置いていることから、SPYDよりは暴落耐性がある(VYMと同程度の暴落耐性)のが特徴です。
一方で、基準価額のリターンは最も低いことから、配当金目当て&暴落耐性があるETFに投資したい人に向いています。
配当金狙いの投資家におすすめ「SPYD」
SPYDの特徴まとめ
SPYDの特徴をまとめてみました。
- 設定日:2015年10月
- 運用会社:ステートストリート
- 信託報酬:0.07%
- 分配利回り:3.6%
- 銘柄数:約80銘柄
- リターン(1年):+18%
- リターン(5年):+60%
- 銘柄選定:S&P500のうち配当利回り上位銘柄
- 暴落耐性:✕
SPYDの詳しい解説は以下の記事を参考にしてください。
SPYDがおすすめの投資家は?
SPYDがおすすめの投資家は、配当金狙いの人です。
高配当ETFの中では分配利回り(配当利回り)が最も高く、配当金狙いであれば最も有力候補となるETFになります。
SPYDの銘柄選定はS&P500から配当利回りの高い銘柄を選んでいるため、常に高い配当金を期待できます。
一方で、コロナショックではVYMとHDVよりも暴落耐性が無いことが判明し、暴落しても気にならない投資家でないと保有し続けることは難しいです。
そのため、配当金をもらい続けることができればよいという投資家に向いています。
まとめ
今回は、米国の高配当ETFを初心者向けに徹底解説しました。
米国の高配当ETFは、VYM・HDV・SPYDの3つがとても人気があります。
どのETFも配当金が高いという特徴は共通ですが、銘柄選定の基準やリターンなどには差があります。
投資の目的に合致したETFはどれかという視点で考えてみるとどのETFが自分に向いているか判断することが可能です。
この記事を参考にして米国の高配当ETFへ投資を検討してみてはどうでしょうか。
配当金に特化したETFは他にもあります。
高配当貴族に特化したETFの「SDY」、連続増配企業に特化したETFの「VIG」は配当金狙いの投資家ならば検討の余地があります。
以下の記事で解説していますのでこちらも参考にしてください。